夕螺の30年日記帳

今までブログで20年日記帳を書いていました。30年日記帳を目指して長生きします。カテゴリー「しりとり俳句」やってます。一句いかがですか♪

ゆらりとした日々(70)

2025年11月20日「ジジイの行列」

いつもと同じく、いつもと同じスーパーに買い物に行った。

今日は夕飯の食材ぐらいしか買うものもないのでさっとカートに入れてレジへ向かった。

スーパーのレジも穴場という場所があり、そこの行列に並ぶと、先にはレジが二つに分かれているので早く支払いを済ませることができる。

いつものようにそこの行列に並んだ。

だんだんとレジも短くなりふと前を見たら、僕を含めてジジイが7人ほど行列を作っていた。

スーパーというと女性が主導権を持つ場なので女性がたくさん並んでいる。そのいくつかあるレジの行列にジジイだけが7人も並ぶ光景は異様な雰囲気を作り出す。女性が主導権を握る場とはいえ、ジジイが7人も並べばさすがの女性も近づかない。

ジジイだからそうはたいしたものはカートには入っていない。

皆さっとレジを通り抜けていく。

 

ゆらりとした日々(69)

2010年11月17日「お守り」

雨の中を電車が走る。窓は少し曇っていて外の寒さが感じ取れる。すいた車内にところどころ誰かの傘から滴れた雨が小さくぽつぽつと床を濡らしていた。
ゴーゴーと鉄橋を渡るとき気がついたら一人のじい様が僕の横に立っていた。水滴の垂れるビニール傘をだらしなく広げたまま引きずっていた。少し会釈をするように僕の隣に座った。
きちんと両足をそろえて座る膝の上には合成皮革のビニールがはげて所々生地が見える大きな鞄があった。
じい様は愛しいようにチャックを広げて下痢止めの薬を取り出しボソッと独り言のように僕に言った。
「お守りなんです」
「はぁ・・・・・」
「電車に乗るとどうもねぇ。腹の具合が。これをもっていると安心する」
「はぁ・・・・」
「だからお守りなんです」
「なるほど・・・・」
じい様はニコニコして鞄の中を手探りで何かを探していた。
手が止まりにこっとした顔でこちらを向いたら歯が2本しか残っていなかった。
「あのね」
「はぁ・・・」
「これもお守りなんです」
僕はちらっと見た。
「私の長男なんですよ。昭和25年10月生まれ!」
黄ばんだ白黒写真の赤ん坊の写真だった。
「私はこれをもっていると一生懸命働けたぁ・・・・」
「そうですねぇ。。。。」
「だからお守りなんです」
「はい・・・・」
じい様の鞄にはたくさんの「物」が入っていた。一つひとつがお守りなんだろう。
じい様はまたニコニコしながらチャックを閉めてやはりだらしなくビニールが差傘を引きずって次の駅で降りていった。
僕は自分の鞄を広げた。「物」が入っていた。
向かいに座る若い女の人の鞄にも「物」が入っているだろう。

 

ゆらりとした日々(68)

2025年11月4日「お札の足が元気になってもらっては困る」

最近、財布の中のお札の減り方が速いように感じていた。これと言って高い買い物をしているわけでもないのだが。どうも減り方が速い。

1万円札を崩すとおつりの千円札が素早くいなくなる。

確かに最近も物価が上がっているからなぁ。でも、減り方が速いような。

今日、スーパーで買い物をしておつりをさいふの中へ入れようとしたら、お守りが出てきた。旅行の時に神社で買ったわらじが一足ついたお守りだった。

爺ちゃんになると足腰の衰えが心配なので、いつまでも自分の足で元気よく歩けるようにという願いをかなえてくれるお守り。

たぶん、このお守りのためにお札の足が元気になって飛び出ていくのかと不安になった。お札の足腰が元気になりすぎて財布から出ては困る。

帰宅後慌てて財布からこのお守りを外して部屋の鍵のキーホルダーにつけなおした。

 

ゆらりとした日々(67)

2025年10月27日(月)「老人とコンビニ」

ぶらっとコンビニに行く機会が多い。

老人とコンビニ。。。。。。

コンビニはモノの値段が高めなので老人は避けると思うのだが、スーパーに行くほどの買い物がないければコンビニが一番良い。

イートインがあればそこでひと時過ごしたり、なにか1品持ち帰って楽しんだり。

コンビニを出てとぼとぼ歩いていたら、ばあちゃんが近づいてきて何かポケットから出して「あんた、これ食わんかね」と。よく見るとコンビニのチキンが入った紙袋をつかんでいた。ニコニコしながら「これうまいんだよ」と。

さすがにもらうわけにもいかずどうしたものだろうと悩んだけど「ありがとう、おいしんだよねこれ。でも、今ダイエットしているから食えないよ。」とポッコリおなかをたたいて笑ったら、「そうかぁ、残念だね」とチキンお袋を上着のポケットにしまった。

毎日のようにチキン一つとビールのロング缶を買って店の前で一人飲んでいるじいちゃんがいる。

毎日ホットコーヒーを買ってうまそうにちびちびと飲んでは一服しているじいちゃんがいる。

真夏の暑い日、介護の人とふらふらしながら缶ビールをニコニコしながら買う酒の豪傑爺ちゃんもいた。

「今日もかい?」と尋ねると、「あははは・・・・これがないとね」と缶ビール1本買って帰るばあちゃんがいる。

コンビニも若い人たちのたまり場だけではないようです。

 

ゆらりとした日々(66)

2025年9月12日「健康器具が介護器具となった日」

高齢化していくと日々肉体の衰えを感じる。

買い物に行ったりして店の階段を利用したとき、無意識のうちに階段の横の手すりをつかんでいる自分に気づくことがある。今まではそんなことはなかったんですけどね。

先日、着替えようとズボンに左足を入れてから右足を入れようとしたら、トッと、トッと、トッと・・・・・そのまま片足で3歩前に進んでしまった。転ばなかったからよかったが、一人、トッと、トッと、トッと・・・・・に苦笑いをした。

今朝は、着替えの時にやはりズボンに左足を入れてから右足を入れようとしたとき、無意識のうちに手すりをつかんでいた。手すりといっても部屋にはそんなものはついていないのですが、ちょうどよいものが部屋の隅に鎮座していました。

健康のためには歩かねばならないと、夫婦二人で相談をしてウォーキングマシーンをテレビショッピングで買ったのですが、いつの間にやら部屋の中の邪魔物になっていた。そのウォーキングマシーンの手すりが良い高さと良い太さなんです。

ズボンに右足を入れる動作がだいぶ楽になる。

というわけで、今日は健康器具が介護器具となった記念日であります。

 

ゆらりとした日々(65)

2025年9月4日「そうは、おどろかない・・・」

 

多少涼しくなったかなと思いながらコンビニまで歩いて行った。

それでも暑いには暑い。汗を流しながらうつむき加減にとぼとぼと歩いていたら、ガラ、ガラ、ガラとけたたましい音が追いかけてきた。

なんだろと思い振り向いたら、お年を召した女性が車道の真ん中をスーパーのカートと同じようなものを押しながら闊歩してきた。案外アスファルトの細かな凸凹がある道路でカートを押すと大きな音がするもんだなと感心をしながら見送った。

コンビニに近づくと、向こうから体の大きさからして足が長く背が高く見えるお年を召さない女性が闊歩してこちらに来た。

近づいてきたのでよく見たら、一本歯の下駄をはいて器用に、普通に歩いて通り越していった。一本歯下駄かぁと感心しながら見送った。

最近、多少の異次元世界では、そうは、おどろかない。

 

ゆらりとした日々(64)

2021年3月15日「桜の精」

 

夜半からの雨風がやんだら
空からさっと日の光が降りそそいだ
きらきらと七色の光は
桜の木にも降りそそいだ
あまりにもきれいなので出窓から眺めた
すると七色の光が集まって
3センチほどの桜の精があられた
蜂のような羽をパタパタと
枝の周りをゆらゆら飛んでいた
おやと思いながら外に出てながめることにした
桜の精は桜のつぼみに近づくと
「えいっ!」と、スティックを振り下ろした
つぼみは開かない。。。。
「開きませんなぁ。。。」思わず声をかけてしまった
桜の精はびっくりしたように振り向き
頭をポリポリと掻いて「あハハハ。。。。。」と
そして大きく息を吸い込んで「えいっ!」
「だめですなぁ。。。。」という言葉が終わらないうち
桜の花がスローモーションのように
1輪咲いた
「ほう、たいしたものですなぁ。。。」